旅券ネット申請廃止

 外務省は、インターネットを通じてパスポートの申請ができる「旅券電子申請システム」を年内に廃止するそうだ。何でもシステム維持に多額の費用がかかる上、利用者が少なく、発給旅券一冊あたり、経費が1600万円に上っているのだという。
 旅券の電子申請システムシステム維持費は、2004年3月から始まった。利用件数は、2005年度末までの約2年間で133件しかなく、一方、システムの維持費は2005年度までに計21億3000万円を予算計上していた。通常、1件あたり3000〜4000円の費用ですむところ、4000倍以上の経費がかかる計算になるそうだ。
 電子申請の利用が少ない背景は、申請には専用のソフトを取りこまなければならないほか、住民基本台帳カードの情報をパソコンに読みこむための機器も必要になるといった事前の準備の複雑さにあるという。
 先日、unizouは住基カードを申請したばかりなのだが、受けられるサービスが早速1つ減ってしまって残念だ。
 そもそも、電子化によって効率的・効果的にする事務はどういったものを想定しているのか。一番のメリットは、反復・継続的に手作業で発生する事務の基本情報をデータ化することによって作業を簡素化するとともに、スピード化を図ることであろう。
 そもそも論として、旅券発給にシステムが必要だったのだろうか?旅券申請者の大半は、5年か10年間有効な旅券を申請していることだろう。したがって、利用者に言わせれば、5年に1回、10年に1回の申請作業に、そんな面倒なシステムを事前に準備してまで行うだろうか。しかも申請は自宅で申請できても、受領には役所の窓口に行く必要もある。
 何でも電子化すればいいというものでもないだろう。真に必要で、国民の間に普及が見こまれると予測して導入したものなのだろうか?
 電子化して評判のいいサービスもある。法務局で行っている「登記情報交換システム」だ。「商業・法人登記情報交換システム」とは,同システムが導入されている登記所間において,他の登記所管轄の登記事項証明書及び印鑑証明書の交付を受けられるというもの。
 法人によっては、法人発祥の地に本店登記は置いているものの、営業の実態は東京や大阪にあることも多い。しかし、印鑑証明等の会社の証明書類は、本店登記のある住所地を管轄する法務局で取得するほかなかった。このシステムの導入で、システムの導入された全国の法務局の窓口間であれば、他の地域を管轄している法務局のデータも申請し、取得できるのだ。日常的にニーズが発生する「印鑑証明書」などの取得が大変便利になったと言う。 
 旅券電子申請システムは、導入に際し、その利用者の利便性にどこまで資するか、その予測が甘かったように思う。何でもかんでも電子化すればよいというものでもないのだから。