機能した株主差止請求権

 7/25付ブログで書いた「日航の公募増資、株主が差し止め求め仮処分を申請」の司法判断か下された。日航が7月中に実施する約1400億円の公募増資を巡り、同社の個人株主が新株発行の差し止めを求めた仮処分申請に対し、東京地裁は26日、申請を却下したという(http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20060726i213.htm)。
 小田正二裁判長は、却下理由を「株式発行で、株価下落の可能性があるとしても、既存株主が受ける不利益は会社法が予定している範囲内だ」として、日航側の主張を全面的に認めた。個人株主は異議を申し立てない意向だそうだ。今回の決定で、日航は27日、増資に応募した投資家から出資金の払い込みを受け、手続きは完了する見通しとなった。
 実際、申請却下が報じられたのが、27日の朝刊、翌28日の朝刊では、「日航増資、払込み完了」が報じられていた。今回の公募増資で調達できた金額は、1386億円に上る(http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20060727ib21.htm)。
 ただ、今回の一連の増資騒動を市場はどう見たか。それは、株価に表れた。26日の東京株式市場では、日航の株価は前日比3円高の209円で取引を終えたが、前日(206円)に続き、公募増資の発行価格(211円)を下回った。これは、株式の大量発行で1株あたりの価値が低下するのを嫌気した売りが出ていると見られているようだが、「株主総会から2日後の増資決定過程の開示に不足があった」と東京証券取引所西室泰三社長がコメントしたように、総会での株主からの批判を避けたかのような日航の情報開示の姿勢を問題視する意見が強い。
 一個人の株主による今回の株主差止請求権の行使は、結果としてその申請こそ叶わなかったが、既存株主の利益保護の観点から法律上認められる権利を確実に行使し、さらには本来コーポレートガバナンスの主体として機能すべき株主のあり方を世に知らしめただけのアナウンスメント効果だけでも、十分に評価できるものとunizouは考えている。