機能する株主差止請求権

 7/20の読売新聞で目にとまった「日航の公募増資、株主が差し止め求め仮処分を申請」という記事。そこには、経営法務でunizouが苦手とする単語の羅列(http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20060720i414.htm)。
 その内容は、日本航空が7月中に実施する7億株(約1400億円)の公募増資について、日航の個人株主が新株発行を差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請したことが明らかになったというもの。
 日航の発表によると、この個人株主の保有株数は議決権1票にあたる1000株、仮処分は19日付けでなされたそうだ。
 新株発行差止請求権とは、会社が法令もしくは定款に違反する場合、または著しく不公正な方法によって株式を発行することによって株主が不利益を受けるおそれがある場合、株主はその新株発行について差止を請求できるとする権利のこと。
 この個人株主による仮処分の申請内容は、日航が6月30日の取締役会で決議した普通株7億株の発行を差し止めの請求対象としている。日航は、「新株発行に法的な瑕疵(かし)・違法性はなく何ら問題はないと考えている」と反論し、裁判で真っ向争う姿勢を見せた。
 今回の増資計画及びそのいきさつについては、次のように報じられていた。
 日航は増資に関してこの7月19日に新株発行価格を決めた。払込期日は、今月27日で、一般投資家への公募と証券会社の引き受け分を合わせ計7億5000万株を新規に発行し、約1500億円を調達する計画だという。
 なお、日航は6月28日の株主総会では一切増資の計画を説明せず、そのわずか2日後に取締役会で増資を決定した。そのため、その後、大量の新株発行による株式価値の希薄化を懸念した売りなどで、日航の株価は大きく下落し、「株主を軽視している」(市場関係者)など、日航に対する批判が出ているそうだ。
 今回の増資が法令違反に該当するか、著しく不公正に該当するかは、今後法廷で明かになであろう。しかし、今回の増資のいきさつを見る限り、いくら公開会社の募集株式の発行が取締役会決議で足りるとはいえ、あまりにも株主をないがしろにやり方に、企業姿勢が問われるのは当然のことのように思う。その声が、実際に市場で日航の株価が押し下げていると言えよう。
 株主は本来コーポレートガバナンスの主権者である。企業経営理論でも株主のガバナンス意識の強化が、形骸化した日本のコーポレートガバナンス機能において重要であると学んだ。
 議決権1票の株主の奮起にエールを送りたい。