1953年問題

 昨日、ニュースで意外な判決(決定)が報じられた。
 映画の当たり年とされる1953年に公開された「ローマの休日」など2作品の廉価版DVDの販売を巡り、著作権の所有を主張する「パラマウント・ピクチャーズ・コーポレーション」(米国)が、東京都内の販売会社を相手取り、販売差し止めの仮処分を求めていた裁判で、東京地裁が、11日、「著作権の保護期間は満了している」として、申立てを却下する決定をした(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060711i216.htm)というのだ。
 ちょうど経営法務で著作権を学習している頃、この1953年問題を知った。世論は、当然パラマウント社が勝つとしていたたため、正直意外な決定だった。
 そもそも、1953年問題とは何か。
 1953年は、争われた「ローマの休日」「第十七捕虜収容所」の2作品のほか、「シェーン」「ナイアガラ」「宇宙戦争」などの名作が相次いで公開された。旧著作権法では、映画の保護期間は公開の翌年から50年とされていたが、2004年1月1日施行の改正法で70年に延長された。このため、1953年公開作品については、保護期間が50年なのか70年なのかを巡り、業界内で見解が分かれていた。
 この点、文化庁は、旧法では2003年末に著作権が切れることになっていた「53年作品」について、「2003年12月31日午後12時と2004年1月1日午前0時は連続しているため、53年作品の保護期間は70年に延長される」との公式見解を示していた。
 しかし、DVD業界では、「53年作品」の著作権は2003年末で切れたとして、廉価版を販売する業者が相次いだ。実際、unizouが通勤で使う駅構内でも1本500円でDVDが売られていた。これをうけ、パラマウント社は今年5月、このうちの1社に対し仮処分を申し立てたのが本事件である。
 結果、1953年問題について、著作権は50年で切れたとする初の司法判断が下された。 
 決定理由は、「著作権法上の保護期間の単位は『日』であり、著作権は2003年12月31日で消滅した」と指摘した上で、「文化庁の見解は司法判断を受けたものではなく誤っている」と、同庁の公式見解を真っ向から否定したものだった。
 パラマウント社側の代理人は、決定を不服とするコメントを発表し、知財高裁に即時抗告する方針を示した。一方、廉価版DVDの販売が認められた販売会社は「主張が認められ、ほっとしている。仮処分申請の後、販売は自粛してきたが、今後、対応を検討したい」とコメントした。
 消費者として、名作を安く買えるのはありがたいことだが、気になるのは、そもそも論として、著作権法を改正し70年に延長した背景にはどんな事情があったのか?そして、改正によって、法はだれをどう保護すべきと考えたのか?ということだ。最終的な結論に至るには高裁での争いを待ってからとなるが、文化庁の公式見解と真っ向対立した今回の判決は大変興味深かった。