盗作疑惑と著作権

 ここ連日、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した洋画家の和田義彦氏の作品が、イタリア人画家アルベルト・スギ氏の絵と酷似しているという盗作問題が報道されていた。最終的に、文化庁は、受賞の取消しを決定した。
 実際に、テレビや新聞で比べられていた両者の作品は、構図や色彩、モチーフなどの点でよく似ていた。
 和田氏とスギ氏は、和田氏が1971年から6年間、ローマに留学して間に知り合い、以来40年近く交流を続けているという。
 今回の件で、和田氏は作品の酷似は認めているが、「スギ氏へのオマージュ(敬意をささげた作品)」、「共同制作だった」と盗作を否定する一方、スギ氏は、自身のホームページ上などで「和田氏の仕事の大部分は私の絵の正確なコピーで、和田氏は法律を犯した。2人の共同作業は一切ない。和田氏は私のアトリエでいつも写真を撮って日本に帰っていった。裏切られた思いだ」と述べていた。
 一般的にオマージュとして描かれる場合は、その旨が作品に明記されることが多いのだそうだ。しかし、和田氏は、自身の作品として発表していた。
 専門家の意見を見ると、盗作や贋作に詳しい美術評論家瀬木慎一氏は「ゴッホが広重の浮世絵やミレーの作品を模写したりするなど、多くの巨匠もほかの作家の作品を使う行為をしているが、これは全然違う次元の問題だ」とコメントし、また斉藤博・専修大教授(著作権法)は「和田氏が共同著作物と言うなら、双方の同意を証明しなければならない」と指摘していた。
 共同著作物!?、その言葉にunizouのアンテナが伸びた。
 共同著作物とは、2人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与分を分離して個別に利用できないものをいうと学習した。
 本件においては、スギ氏が共同作業は一切ないと主張する限り、そこに共同著作物が成立する余地はない。
 では、複製?本件において、和田氏は、和田氏本人の作品と主張している以上、複製ではない。では二次的著作物?こちらも和田氏オリジナルと主張している以上成立しえない。
 今回の盗作事件は、明らかに著作権の侵害に該当しよう。今後、スギ氏が和田氏に対し、どういう策にでるかは明らかにされていないが、損害賠償請求、名誉回復等措置請求等があることは、著作権侵害に対する手段として学習済みだ。
 受賞取り消しで一応の決着を見たようであるが、今後のスギ氏の動向にしばらく注目してみたい。