社会保険庁

 国民年金保険料の不正処理問題で、社会保険庁が、またもや、時の人ならぬ組織になっている。被保険者の申請なしに5万7686件も保険料の免除・猶予を行っていたのだという。(中間的な調査結果)
 その数字は、これまでに被保険者の意思確認をしないまま保険料免除などの手続きをしたことが明らかになっている三重、大阪、長崎、東京、京都の5つの事務局分について集計したもので、今後の調査次第で、その数字はもっと大きくなるかもしれない。
 これらの不祥事に関しては、原元三重事務局長が、京都で不正処理が発覚した3月と、大阪での不正処理発覚を受けた今月18日に行われた本庁からの調査に対し、2度とも「適切な事務処理が行われております」と返答した責任で、26日付で総務部付に更迭された。
 一方、小泉純一郎首相が「改革の総仕上げ」と位置づける行政改革推進関連五法が、26日の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。
 小さな政府を目指し、国家公務員削減や政府系金融機関の統廃合など5分野の5−10年の改革指針を定め、次期政権に構造改革路線を継承させることを狙った法律だという。
 unizouは、小さな政府を目指す改革(「官から民へ」)、国と地方の三位一体の改革(「中央から地方へ」)の流れについては、おおむね賛成である。
 しかし、今回の社会保険事務所の事件との関連で言えば、前回の社会保険事務所の問題とは違って、行政を責めるだけでは済まされないという気がしている。
 国民や行政のあり方の本質を見ていない政治の膿や行政の組織ではなく制度上の欠陥が、結果としてこう言う事件を惹き起こしたのではないのだろうか。
 今後、行政改革推進関連5法に基づく行政組織や制度を考える上では、議論すべきところなのではないかと思っている。
 では、なぜ、社会保険事務所の事件と行政改革推進関連5法が関係するのか?
 読者のみなさんは、学校給食費の未納問題をご存知だろうか?
 この件に関しては、「学校給食ニュース」に詳しい。
 http://gakkyu-news.net/jp/010/013/post_206.html
 今、学校では、学校給食費の滞納が増えていてその対応策に学校や自治体が悩んでいるのだが、それぞれの家庭が滞納している理由は、生活が困窮しているからということではないという。
 そして、こういった現状は、日本のどの地域、どの学校ということに関わりなく起きているという。
 つまり、日本人のモラルの低下は、こんなところにも顕著に現れてきている。
 徴収する側も、金額が小さいがゆえに、「督促」「差押え」なども真剣にできず、払う側も、大した問題と考えていないのだろう、結局、真面目に払っている人がバカを見るだけなのである。
 こんなに、小賢しい人が多い世の中になってくると、実績を上げるために社会保険庁が今回のような対応をしたとしても不思議ではない?ことかもしれない。そして、社会保険庁以外でも、こういったことが、実際は起こっているのではないかと思うのである。
 国民年金保険料は1か月1万3860円で、よっぽど困窮している人でない限り、決して払えない金額ではない。かといって、社会保険庁も、差押えをしてまで徴収するほどの金額ではないし、件数が多くて、多くの職員を動員しても、どうにもならないのではないか。
 学校給食費だけでなく、電気料や、電話代、新聞購読料など、大した金額ではないがゆえに、世間では頻繁に起こっているのではないかというのが、unizouの推測するところである。国税や住民税だって、金額が少ないものは、手間ばかりか掛かるからという理由で、社会保険庁のように、免除や猶予をしていないのだろうか?
 社会保険事務所の件で述べたように、これらの問題が、徴収する人や職員のせいとだけ言っているだけでは済まされない。電気料や、電話代、新聞購読料だって、未納者がいれば、きっと、貸倒れリスクとして他の消費者の価格に転嫁されているのだろうし・・・。
 小さいがゆえに取締りができないのであれば、こんな形にしたらどうだろう。
 以前、アメリカだったと思うが、小さな債権を集めて徴収する仕組みがあったように思う。つまり、電気代10千円、水道料5千円、新聞購読料、7.6千円、学校給食費56千円、所得税125千円、住民税65千円、国民年金65千円、国民健康保険84千円、カード会社の支払い250千円。合わせて、667.6千円を、ある機関が徴収するという仕組み。
 行政は、守秘義務があるから難しいという話になるかもしれない。
 しかし、生活が困窮しているという理由でなく、モラルの低下がその滞納・未納の原因であれば、収入が少なくても一生懸命生活している人たちの立場に立って考えれば、社会保険事務所にもきちんと対応してもらいたいだろうし、責任を全うさせてあげるには、取り締まる側の効率性を考えた制度(義務を果たさない人たちに対する対応の徹底)を考えてあげないと、社会保険事務所を責めるばかりでは根本的な問題は解決しない。
 他の行政組織の改革においても同様なことが言えるのではないか?
 公正さや公平を求める多くの人たちの声にも応えなければならないとなると、頭数だけでは処理しきれないほど事件・事案は多く、国民の側もきちんとした制度を考えてやらないと、コストが掛かるわりに効果は上がらないというジレンマに陥って、国民としては何のメリットもないと思うが、いかがなものか・・・?