会社法vol.4(中央青山監査法人に見る企業と士業)

 今、診断士の講義は、「経営法務」の学習の真っ最中である。
 そんな中、今月10日に「金融庁は、カネボウ旧経営陣による粉飾決算事件に関連して、4大監査法人の一角を占める中央青山監査法人(東京都千代田区)に対し、初めて4大監査法人への業務停止処分(一部業務停止)を命令した。」という報道がされた。
 今回のニュースは、事件発覚当時から当然のことのように言われていたことでもあり、「企業と士業の関わりを見るとき、士業が如何に企業よりのスタンスであるか。」を証明したものの、以前のブログに書いたが、実際のところは今回報道された件が特別なことでなく、世の中はほとんどの士業がクライアントに対しそんな姿勢であり、別に驚くこともないと思っている。
 昨年から世の中を賑わしている耐震強度偽装事件も同様で、法律上はありえないことなのに、確認することがないからわからないだけのことである。
 法が不備なのでなく、法を執行する態勢が不備なのである。
 昨日のブログで「会社法の主たる目的は、取引の安定と債権者保護の2本柱である。今回の改正で、債権者保護の観点が置いてきぼりされているような気がしてならない。」と書いた。
 会社法では、主として大規模な株式会社において計算書類の監査を行う機関として、会計監査人を置くことになっている。そして、会計監査人の資格は、中央青山監査法人のような監査法人公認会計士のみに限定されている。
 しかし、士業(公認会計士)が担う会計監査人が、クライアントである企業よりのスタンスで会社の計算種類を監査しているのでは、債権者の保護どころではないはずである。
 こんなことは、金融庁も知っていたのに手をつけなかっただけ(手をつける余裕がないのが正解かもしれない。)であり、今回の事件で、多くの債権者や投資家が多大な損害を受けたから、動き出しただけなのではないかと思うのは、穿った見方だろうか。
 こういった事件の影響は、債権者や取引先、そして投資家だけの問題なのだろうか?
 確かに、会社法では、その目的を「取引の安定と債権者保護の2本柱」といっている。
 しかし、今回のような企業のあり方、そしてそれを監査する士業のスタンスは、社会全体の風潮を悪い方向(コンプライアンスのない利益優先主義)へ誘導しているのではないか。
 もっと、広い意味で会社や個人の事業主の活動を捉えて、法の執行をしていかないと、見つからなければ何でもありの世界になり、真面目に義務を果たして競争する人はいなくなるとunizouは考えている。企業などのあり方そのものが、公平な社会の実現(競争を否定するのではなく、スタートラインや競争環境を同じにすること)や、環境問題にも多大な影響を及ぼすほどの存在であり活動であるからである。
 ざる法という言葉をよく耳にするが、ざるなのは法律ではなくて執行態勢であり、今回のような事件だけでなく、世の中のいろいろな法律がきちんと守られるような態勢を作ることが急務なのである。
 取り締まる側の人数が増やせないなら、もっと大切な公平や安全などを守るために、多少国民が不便を強いられるようなこと(外国人犯罪を防止するための指紋押捺や組織犯罪を取り締まるための通信傍受など)があっても、背に腹は変えられないし、コストの面でも致し方ないと思っている。
 会計監査人などの士業の業務を取り締まる効率的で、効果的な方法はないだろうか。
 行政側も、金融庁だけに頼らずに、企業の計算書類を目にするところもあるだろうから(例えば税務署)、企業が法令を遵守をしていないことを発見したら告発するなど積極的に対応することを考えたらどうだろう。行政の限られた人数で対応するのであれば、横断的な対応が必要なのではないだろうか?