曽根綾子2

 「サラリーマンの福利厚生」をうたい文句に雇用保険料で建設された勤労者福祉施設の売却処分が3月末までに終了し、全2,070施設のうち買い手のついた1,976施設の売却総額は約127億円で、全施設の建設費4,406億円のわずか2.7%にとどまったことが厚生労働省のまとめで分かったそうだ。
 しかも売れ残った92施設は、買い手がつかずに取り壊され、新たに約20億円の解体費用がかかったことも判明した。
 勤労者福祉施設の建設は、サラリーマンの福利厚生のためとして、当時の雇用促進事業団により、1961年にスタートし、計4,406億円を投じ、全国に体育館や保養・宿泊施設など、2,070施設が2001年までに建てられていた(http://www.ehdo.go.jp/profile/pdf/fukushi.pdf)。
 しかし、当初の見積りが甘かったか、利用者は伸びず、採算の取れない施設が多く、特殊法人の整備合理化の一環として、1999年に全施設の売却方針が決まった。
 買い手のついた1,976施設の72.5%に当たる1,501施設が、105,000円以下で売却され、うち、「1,050円」や「10,500円」といった子供のお小遣い程度の金額で売却された施設が863もあるというから、あきれて物が言えない。
 この責任は、誰が果たすのか。当初計画案を策定した人達に出てきてもらいたいものだ。
 産経新聞の毎週月曜朝刊に、曽根綾子さんのエッセー「透明な歳月の光」が掲載される。
4/17付では、自身が日本財団に勤めていた頃経験が綴られていた。
 それは、日本財団が手狭になり、新社屋を買ったときのこと。新社屋は古いビルで、それを改装して使うことになったのだが、曽根さんは「新しい旧社屋」か「古い新社屋」か表現に悩んだ社屋だという。
 改装の費用も公的な団体だから当然入札による。曽根さんは知らなかったそうだが、改築の場合、「業界の慣習」とやらで、必ずその建物を最初に建てた会社が落札できるよう他社は高い値段で応札するのが暗黙の了解とされていた。
 これでは競争入札が形骸化するばかりか、財団も談合に手を貸すことになる。
 そこで、曽根さんは考え、公開入札の告示をするときに1つの条件をつけることにした。
 「最初にこのビルを建てた施工者を除く」という条項をいれた。
 そんなことを今までやる人がいなくてもいなくても構わない。こちらは「お施主さま」の立場なのだから、理由のある条件ならつければいいのだと。すべて財団の健全な財政のためだった。
 結果は、予定価格の23億400万円に対し、17億9000円という安さになったという。
 この当たり前の感覚が、公費に携わっている人達には足りなすぎるのだと思う。
 「慣習」、「前年踏襲」、「いつもそうやってきたから」から、本当に足を洗おう!