法作りの番人

 昨今施行される法律は、その法によって真に保護したい「者」を本当に保護できているのかいささか疑問に思う。
 この4月でまもなく施行1年を迎える「個人情報保護法」。
 本来は個人の権利利益を保護するために施行された同法だが、法律の中身が浸透しておらす、解釈の基準も固まっていないせいか、誤解が多発しているという。
 法律違反となるリスクを負いたくないとの判断が先行し、過剰なまでに個人情報の提供しないという対応が目立つ。例えば、学校のPTA名簿が廃止されてしまったため、緊急連絡の際に大変苦労した、入院している親への病名告知を望んでいない家族が、病状を把握するのに本人の同意がいると断られたなど、本来例外規定に照らし開示できるものまでも、規定にあてはまるかを検討するのを億劫がって、とにかく不開示とする例が少なくない。
 その一方で、本来取り締まるべき、名簿業者を通じた名簿売買や執拗なまでの勧誘電話などは一向に減らない。
 そして、この4月から施行され、施行直前の今になってにわかに世間を騒がせている「電気用品安全法」。
 電気用品安全法の安全基準を満たしたことを示す「PSEマーク」のない家電製品が4月から販売禁止になる問題で、中古品販売業者から猛反発を受けたため、経済産業省は24日、マークのない中古家電について、当初レンタルした後に同じ人に無償譲渡する場合は「販売と変わらない脱法的な行為」としていた方針をひっくり返し、当面の間、同法の対象外となっているレンタル扱いにすることで事実上、販売を容認する見解を表明した。
 また、25日に謝罪した経済産業省は、「メーカーとばかり話してきて、循環型社会という大切な役割を(中古品販売業者と)十分話し合わずに進んだのが一番の反省点」とコメント、「見切り発車で法を作りました。」とも取れる何ともお粗末な話だ。
 そして、大改正を経て、最後の大物とも言える「新会社法」が、この5月施行される。
 改正点は多々あるが、身近なところで目を引くのは、「1円会社」と「1人会社」が認められることだろう。
 これまでは、最低資本金制度により、株式会社であれば1,000万円必要であったところ、資本金制度が撤廃され、また株式会社なら最低3人の取締役が必要であったところ、取締役は1名で足りることになる。
 つまり、資本金や取締役などの制限が従来より大幅に軽減され、会社設立の敷居がかなり低くなるのだ。unizouでも簡単に起業できる。
 確かに、開業率が低迷し、失業率も高水準を推移する中、創業による雇用の創出に期待される経済効果は大きい。景気回復に拍車をかける起爆剤にもなるかもしれない。
 しかし、「1円会社」、「1人会社」ばかりが世の中に増えてきた場合、会社法の目的の一つとされる「取引の安全性」は果たして保護されるのだろうか。
 起業が取引をするに当たって、今まで以上に相手の信用調査(事業内容、資金力、倒産リスク等)に手間隙かけないと恐くて契約できないといった事態に陥りやしないかいささか心配だ。
 施行数年後、世の中に幽霊会社休眠会社があふれていないことを祈る。