東横イン 刑事告発なし?

 不正改造による建築基準法などの法令違反で騒がれたビジネスホテルチェーン「東横イン」。
 「現時点で、関係する自治体は、刑事告発を検討していない。」というニュースが最近流れた。
 不正改造があった22都道府県の「東横イン」の系列ホテル63軒のうち、3月中に是正工事が終わらないのは、東京、千葉、神奈川、京都の4都府県11軒となるそうである。
 また、11軒のうち千葉県船橋市の「東横イン船橋」を除く10軒は、既に是正工事に着手しているという。
 国交省も「円滑に是正が進めば、刑事告発自治体に働き掛けはしない」との方針を固めているという。
 しかし、本当に、それでいいのだろうか?
 今、診断士の講座は「運営管理」の学習の真っ最中である。
 店舗施設を有する中小企業が、知っていなくてはならないのが、店舗施設に関する法律知識である。
 特に、“まちづくり三法”と言われる、大規模小売店舗立地法中心市街地活性化法、そして、(改正)都市計画法は、試験対策上でも重要な法律である。
 その中で、都市計画法の目的は、「都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」と規定されている。
 そして、第7条で、「都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(「区域区分」)を定めることができる。」としており、開発許可も、その区分区域に応じて認可・承認をすることになっているし、行政には監督権限があり、違反した場合は、許可、認可若しくは承認を取り消し、変更し、その効力を停止し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて、建築物その他の工作物若しくは物件の改築、移転若しくは除却その他違反を是正するため必要な措置をとることを命ずることができるとされている。
 しかし、実際には、多くの地方自治体はそういった措置をとらずに放置したままで、違法な開発行為はそのままになっているケースが多いという。
 今回問題になった東横インが違反した建築基準法にしても、然りである。
 でも、東横インばかりを、責められないのも事実である。といって、行政が悪いとも言いたくない。誰が悪いといえない運用の仕方をしても、誰も関係ない法律になってしまっているのが、一番悪いのである。
 世間も、自分の日照権が侵害されるなど、自分に関わる住環境が悪くなると言えば、声を大にして叫ぶけど、自分と関わりないことは無関心になってしまう。その先にあるのは、自然環境の破壊であり、住みにくい世界だと思うけれど・・・
 ではどうしたらいいか。全部の審査を行政がやることは当然無理だと思うので、世間で「検査職員を多くする。」という話が出ていることも理解できるが、都市計画法の「国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進」、建築基準法の「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進」、つまり、「幸せな住環境で生きましょう!」ということのため、法律を適正に運用することが一番手っ取り早いと思う。
 そのためには、法律が適正に執行さえているか世間が関心を持って臨むことが一番なのである。
 そして、今回の件でいえば、監督権限を生かして是正措置の期限を設け、それに従わなかった場合は、きちんと刑事告発すべきだったのである。
 システマチックにそういった積み重ねをすることが抑止力になる。本当は、ただそれだけに尽きるのだと思っているのだが・・・。