「モモ」とIE(経営工学)

 昨年の夏ごろからずっと机の上で眠ったままになって気になっていた本「モモ」を数週間前にやっと読み終えた。
 読み終えてから、何だか自分も「時間どろぼう」に追いかけられているようでもあり、周りの人も「時間どろぼう」にさらわれているような気がして、怖くなった。
 怖くなったと言うより、空しくなったというほうが正解かもしれない。
 詳しいことは、また後日機会をもうけて感想を書くことにしたいが、最近学習した診断士講座の運営管理の中のIE(Industrial Engineering)との関係について、今回そこだけ触れる。
 IE(Industrial Engineering)は、JIS生産管理用語では、「経営目的を定め、それを実現するために、環境(社会環境及び自然環境)との調和を図りながら、人物(機械・設備、原材料、補助財及びエネルギー)、金及び情報を最適に設計し、運用し、統制する工学的な技術・技法の体系JIS Z8141-1103」と定義されている。
 このIE(作業研究)の方法として、「方法研究」と「作業測定」があり、また、その二つにも、それぞれの手法があり、その上でさらにいくつもの分析方法がある。
 unizouは、JIS管理用語の「人物(機械・設備、原材料、補助財及びエネルギー)、金及び情報を最適に設計し、運用し、統制する。」というくだりが、「モモ」にでてくる道路掃除夫ベッポの言葉に引っかかるのである。
 ベッポはまだ町がまだ眠っている夜明け前から、道路掃除をしている。とてつもなく長い道路を、ほうきで掃いていく。でも、ベッポはとても大事な仕事だと自覚していてていねいにやり、ひとあし、ひといき、ひとはきと進んでいく。
 ベッポは、とっても長い道路を目の前にすると、「これじゃやりきれない。」思う。

 「そこで、せかせかと働きだす。どんどんスピードを上げてゆく。ときどき目をあげて見るんだが、いつ見てものこりの道路はちっともへっていない。だから、もっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息がきれて、動けなくなってしまう。道路はまだ残っているのにな。こういうやり方はいかんのだ。」
 「一度に全部の道路のことを考えてはいかん。わかるかな?つぎの一歩のことだけ、次の一呼吸のことだけ、次のひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけな。」
 「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」
ミヒャエル・エンデ作大島かおり岩波少年文庫より抜粋】

 たのしくなる仕事・・・。その仕事をこころからたのしく思えること。
 毎日、追われるようにしている仕事、ただ終われればいいという気持。
 そう思うと、長くてつらい仕事になる。工夫も出てこない。そこから、想像も生まれなければ、人のために役立つこともない。ということは、自分自身の存在さえも失われていくこと・・・?心底、仕事を愛して、楽しめれば、「時間どろぼう」に盗まれた時間でなく、時間が自分の中で積み重なっていくのだろうと思う。
 IEも大事かもしれないが、「ちょっと風変わりな中小企業診断士になれたらおもしろい。」と、最近考えている。