差額ベッド

 母が入院することになり、かかりつけのK医院から病院を紹介された。
 市街地から離れ、田んぼの中に突然現れたような中規模なH会病院である。
 前にも母が2度入院したことがあるので、今回もK医院の紹介どおりにその病院にすることを最初から決めていた。
 母と一緒に病院に行き、K医院からの紹介状を先に渡して待っていると、看護師から診察を受ける前に「個室(トイレ付)しか今開いていないので、空いたらすぐに大部屋に移すということで個室に入院しますか。」と説明を受けた。
 こちらとしては、「入院させなければどうしようもないし、おそらく1週間ほどの入院だろう。」と考え、「お願いします。」と応えた。
 その後診察になり、担当医から「しっかり治すには、1か月くらい必要ですね・・・」と言われ、予定外の入院期間に面食らった。診察が終わり、1か月の入院に戸惑っているunizouに、事務職員が入院時の費用について説明をしてくれたのだが、それが、さらにunizouに追い討ちをかけるようなびっくりする内容だった。
・・・個室の差額ベッド代が、なんと15,000円。
 そのほかに、院内感染防止のために、パジャマからティッシュなど、すべてのものがリースで3,000円近くかかるという。
 つまり、一日20,000円近くの出費で、およそ30日間。医療費以外の出費で約60万円となる・・・。
 母は心臓の肥大で水がたまってしまって入院することになったのだが、unizouの心臓も大ダメージを受けた。入院の手続きを終え一旦家路についたのだが、心臓の動悸がだんだん怒りに変わってくるのを感じた。
 市街地から離れた田んぼの中に突然現れたような建物で、景色は見渡す限り田んぼである。
 いまどきのナイスロケーションな(海や山、都心の夜景など景色が綺麗な)ホテルにとまっても、そんな金額はしない。
 それに、パジャマから歯ブラシ、ティッシュペーパーなどのアメニティグッズも付いているし、トイレだけでなくバストイレ付である。
 その金額を出せば、1泊2食付で夕飯は食べきれないくらいたくさんの料理が出てくるはずである。
 栄養士が考えるだろうが、母には山盛りのおかゆと味気(塩気)ないおかずが2品だけの食事である。
 担当医師は問題ないので、文句を言うことやめようと思ったが、さすがに1週間近くたっても「大部屋に移します。」という連絡がないので、かかりつけの医師にどうしたらいいものか教えてもらうことにした。
 K医院の先生は、「病院側の都合で個室に入った場合は、免除の規定もあるし、もういちど、別の病院に紹介状を書いてあげますよ。」という。
 そこで、もう一度、朝一番にH会病院へ行って、「病院側の都合の場合、差額ベッドの免除はできないか?まだ、大部屋が空かないのであれば、今後のことも考えると転院せざるを得ない。」と話した。
 話を聞いてくれたのは、看護師長か、ナンバー2の女性。免除規定については、あっさりと「世間ではそういう人もいますが、ありません。」と・・・。
 そして、大部屋の件については、「今日、患者の病状を見て病室の移動を予定している。そのときに、大部屋が空くかもしれない。そしたら、移ってもらうことも可能です。ただし、お昼以降になりますので、ご連絡をさせていただきます。」と言う。
 仕方ないので、仕事に戻って待とうと、30分くらい母と話をしていた矢先である。
 先ほどの女性看護師が戻り、「大部屋が空きそうですので、ご用意できます。」と・・・?
 それから、あっという間に、病室を移動することに、・・・。一体、どうしたのという感じである。募るのは、病院不信である。
 母は歩けるし、話もできる。完全看護で見てもらう必要もない。本人は、個室のほうが周りを気にしなくてもいいので良いだろうが、逆に話をしないでテレビばかり見ていて呆けられてしまうのも困りもの。コミュニケーションをとって、多少は脳を刺激してもらわないと・・・。
 必要以上のサービスで儲けようという医療機関の姿勢を垣間見た気がしてならない。医療を受ける人の不信感は、きっとそう言うところにあるような気がしてならなし、また、本当に受けたい「病気を治療する」というサービスが抜け落ちている気がしてならない。
 医療の問題を切実に感じた今回の一件である。
 医療機関にも、「旅の窓口」にあるような「お客様の声」なるものを紹介するホームページが必要・・・?