ニート・フリーターと中小企業

 中小企業診断士の講座の「中小企業経営・政策」の科目でも、中小企業と人材を巡る諸問題の中で、若年層の就業状況についてニートとフリーターのことに言及している。
 社会問題だと思っていたニート(52万人)やフリーター(217万人)が、中小企業の経営に影響を与え、診断士としてもそのことを知っていなければいけないということに、必要とされる診断士の知識の幅の広さを実感させられる。
 また、「中小企業経営・政策」の学習の多くが、社会問題になっている事象と関わっている気がする。
 「資格取得のための学習であれば、テキストを2回確実に学習するので十分です。2回確実に読んで余裕があったら、中小企業白書を読んでみてください。」と講師が言っていたが、中小企業白書を本屋で手にしたら、その内容が社会問題に関する読み物としても、非常に面白いと感じて思わず購入してしまった。
 例えば、フリーターについて言えば、「若年層の就業意識の変化」という項で、

 フリーターは親と同居し経済的に余裕のある若者を中心として出現し始め、当初「フリーター」という用語には、組織に縛られないで自由に働き生活をすることを積極的に評価する意味があった。しかし、最近では、正社員としての就業を希望する比率が高いものの、現実には大企業の新卒による正社員採用が減少したため、若年者の中に、希望に反してフリーターとして、アルバイトに留まる者が増えていると考えられる。

 そして、脚注には、

 フリーターが現れた経済的な背景として、高度経済成長とバブル経済を経て、平均的な所得が上昇し、親の世代が成人の子供に経済的自立を直ちに求めず、住居、食事、家事等の生活の基礎を提供する場合が多くなったことを背景として、親と同居する若者を中心に、学業卒業後アルバイトやパートを続け直ちに本格的な就業を行わない余裕が生じた。この中で基礎的な生活費や家事を親に依存し自らの収入で海外旅行等の贅沢な暮らしを行うことができる「フリーター」や「パラサイトシングル」が出現した。当初「フリーター」という用語には、組織に縛られない自由な生き方ができるとの積極的な意味が強かった。

 「うーん、なるほど。」という感じ。中小企業についての知識だけでなく、社会問題についての知識まで得られてしまう。
 中小企業が企業数で全企業数の99.7%、4,689,609社、従業者数で、全従業者数の70.2%、29,963365人を占めること考えれば、中小企業に関することが社会問題に影響されるのか、中小企業に関することが社会問題になるということは別にして、当然に中小企業経営者やその周りの人達も知っておくべきことなのかもしれない。
 その他にも、「人口減少・少子化対策」、「終身雇用制と年功賃金制」、「女性の就業」、「まちづくり」など、社会問題化していることに影響していることが本当に多い。
 また、機会があったらブログに書いてみようと思う。
 そして、ざっと中小企業白書を見た中で、昨今の世間の話題と照らし合わせて非常に興味深い中小企業の役割として、「人生」にまで言及している部分があったので紹介しよう。

 中小企業が、人生の多くの中で多くの再挑戦や逆転の機会を提供する存在であり続け、人々の機会の平等に対する信頼の確保に寄与していくことは、経済的格差が拡大しているように見える社会の中で、人々の活力や希望が保たれ続けるために非常に重要であり、今後もその実態把握と政策的支援に努めていくことが重要である。【中小企業白書2005年版P180 ぎょうせい刊】