日本の労働市場の変化と中小企業

 日本の労働市場に構造的な変化が生じている。
 少子化と高齢化という人口動態の変化が労働市場に大きな影響を与えているのだ。
 最大の変化は①労働力の高齢化、そして少子化対策の観点からは②女性の就業と出産・育児を両立させていくための環境整備、さらには労働人口が減少傾向にある中で、③かえって若年者の就業状況は悪化していること。
 実は、中小企業は大企業に比べて、女性や高齢者が働いている割合が高いことをご存知だろうか。
 そんな中小企業の工夫が、今日の読売新聞に取り上げられていた。
 題して「中小企業流働くママ支援」、仕事と育児の両立支援に力を入れる中小企業が増えてきた。人材を有効に活用したい企業側にとって、両立支援を経営戦略ととらえる意識が芽生えてきたという。
①山梨市富士吉田市の情報処理会社「富士情報」
従業員3000人のうち200人以上が女性、育児休業を社内制度化し、取得率は100%に達している。休業者が毎年数人いることを見越して新規採用も多めにしているという。
同社長は「経験者が継続して働く方が、新人を一から教育するより企業としてのメリットが大きい」と話す。
②クリーニングチェーンの「喜久屋」(東京、従業員約300人)
店舗の奥にキッズスペースがあり、子連れで出勤できる。工場でも夏休みなどには子連れOKと取り決めている場所もある。同社長は「制度化したわけではないが、事故に気をつけつつ柔軟に対応している」と話す。
③札幌市のコンピューターシステム会社「ビー・ユー・ジー」(従業員約100人)
在宅勤務を制度化し、現在子育て中の女性5人がパソコンを活用して自宅で仕事をしている。男性にも制度利用者は多いという。
 「こども未来財団」が昨年中小企業800社に対して行った「両立支援」調査によると、子育て支援策としての残業免除、看護休暇、半日・時間単位の有給休暇などの制度を整える企業は2001年の調査時よりやや増えた。
 その間経営者の意識は大きく変化し、「子育て支援は企業の経営にプラスか」という設問に前回55%もいた「どちらかといえばマイナス」が今回は8%に。「どちらかと言えばプラス」は31%から42%に増えた。
 次世代支援に詳しい富士通総研の主任研究員のコメントが印象的だ。
 「人材を補充しにくい中小企業にとって、両立支援は不可欠で切実なもの。社内保育所の整備や手当制度など大企業並みの方策は難しいものの、柔軟な支援策を地道に行う所が増えてきた。支援方法をよく知らない企業に対しては、情報提供も大切になってくる。」
 今後、中小企業の雇用創出力が、日本の労働力の受け皿としての役割を担う動きにおおいに期待したい。