人口減社会

 先月22日、厚生労働省から2005年の人口動態統計・年間推計が公表され、1899年の統計開始以降始めて、05年の日本人の死亡数が出生数を上回り、差引1万人の自然減となったという報道がなされた。
 以降、新年の特集記事にはやたらと「少子化問題」という言葉が目立つ。
 というのも、人口減の最大の要因は、少子化で、出生率(2004年合計特殊出生率1.29人)の低下になかなか歯止めがからないためだ。
 例えば、元旦から日経新聞は、「人口減に克つ」と題した社説をシリーズ化し、昨日はその第2回目、「人口減に克つ(2)『女性が辞めない会社』が飛躍する」を掲載しているし、今日から読売新聞は、「超少子化を語る」と題したシリーズを掲載し、有識者ら5人が、それぞれの立場から現状分析と将来への提言を行うという。ちなみに初回の今日は、少子化男女共同参画相の猪口邦子大臣であった。
 http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20060102MS3M0200202012006.html
 各紙とも、論調で気になるのは、「超少子化」の背景は、仕事と子育ての両立支援や育児への経済的支援が不充分であるというあてはめである。
 出産を機に女性の7割が離職するとの統計が、仕事と育児の両立がいかに難しいかを物語っているとして、家庭と仕事かという厳しく不幸な二者択一を迫るやり方を改め、現在働いている人への子育て支援に拍車をかけるべきだとまとめる。
 女性の労働力を喚起するような枠組つくりも必要と猪口大臣もコメントしている。
 果たしてそうだろうか?
 実際に様々な世代、仕事、生活をしている女性にヒアリングしているかは不明であるが、果たしてどこまで、結婚・出産後も働きつづけ、真剣に責任ある仕事につきたいと思っている女性がいるのだろうか。
 そこまで、仕事に対する女性の価値観は、ある程度統一されてきているのだろうか?
 女性の社会進出の歴史はまだ浅い、だから職業観も長く一家の大黒柱を担ってきた男性と比べると千差万別のように感じる。
 少なくとも現状の制度の中で働きつづけ、家庭を築き、子も設けている人は、本当に芯があって立派だと思う。今第一線で働く女性の中には、制度が整備されておらず、出産後2週間で職場復帰したと言う経験を持つ人も少なくないだろう。
 しかし、第1子を出産するときに退職している人は、制度がどうとかでなく、そこまで両立する意思がなかったというのが一番なのではないか。
 家庭や育児の充実を自分の一番の仕事と考えている女性もけっして少なくない。
 結婚で退職、出産で退職した人が皆、辞めたくないけど泣く泣く辞めたっていう論調で語られるのは、甚だ疑問である。
 もちろん、きちんとした枠組があれば、そこで退職から救えた人もあろう。しかし、実際、寿退職を望む結婚観をもつ人も現実にはまだまだ多い。
 少子化問題と言うと、女性の仕事と育児の両立が全面に出され、次に公的年金制度などの社会保障制度への悪影響が語られる。
 もっと、男女・世代を問わず、「人間が子供を生み育てること」とはどういうことか、根本的なことを教えていくこと、議論することが重要なのではないだろうか。