心のバリアフリー

 先日、社内研修で、手話通訳士で、NHK教育テレビ「手話ニュース」のキャスターとしてご活躍中の中野佐世子(なかのさよこ)氏による「はじめの1歩」と題した講演を聞き感銘を受けた。
 先生の講演を聞くのは、実は今回で2回目なのであるが、何度聞いても感動し、人に対する思いやりであるとか、痛みについて考える貴重な機会をなっている。
 先生が言う「バリアフリー」の意味は、道や床の段差をなくしたり、階段のかわりにスロープを作ったり、電卓や電話のボタンに触ればわかる印をつけたりするといった障害者や高齢者の生活に不便な障害を取り除こうということはもちろん、より重要視しているのは「心のバリアフリー」、つまりひとりひとりの心の中には本当にバリア(壁)がありませんか?ということだ。
 そして、先生は、「心のバリアフリーを進めるためには、まず障害者や高齢者のことを正しく知り、理解することです。」と話され、このように語った。  

 あなたは電車で席を譲って断られたことがありますか?
 断られたあなた。相手がなぜ断ったのか?その理由を聞かれましたか?
 私は障害者の合唱団に入っています。
 そのメンバーの一人の男性は杖をついて手足にギブスを付けています。この人は体の筋力がないので、一度座ると自分で立つことができません。
 ですから、席を譲られても、座ったら最後自力で立ち上がることが出来ないのです。
 でも、彼の姿は杖にギプスですから、乗り合わせた乗客は席を譲ろうと彼を放って置きません。
 それを断るのがイヤで、電車に乗るときは誰にも目を合わせないようにドアの隅っこにじっと立つようにしています。
 彼が一番懸念しているのは、自分が断ったことで、断られた人が2度と障害者に席を譲らなくなってしまわないかということ、彼が原因でその人の心に壁を作ってしまわないかということだそうです。
 つまり、それぞれ求めていることが違うということ。
 断られてイヤな気持ちにならずにいろんな人がいることを理解していただきたいのです。 あなたの思いやりを待っている方がたくさんいるのですから。

 「いろんな人がいることを理解すること」、これは何も障害を持った人だけに限った話ではない。職場、友人、家族、親戚などにおいても共通のことだ。
 Unizouも、先入観や偏見、思いこみの中で人と接していることもあるように思う。
 「ひとりひとりを尊重し、思いやりをもって接すること」、言うは易し行うは難しであるが、心のバリアフリーを実現できるよう、今すぐ出来ることから始めてみよう。