金魚の話 vol.3

 我が家の金魚、いつのまにか大家族になっていた。
 そんなある日、いつも同じ仲間じゃつまんなかろうし、同じ血を引く者同志、新しい風をいれる必要もあろうということで、新しい仲間を迎えることにした。早速同級生のお父さんが営む金魚やへ仲間を求めに直行する。
 まず、種類。そこはやっぱり和金、何と言っても生命力が強いから。我が家の金魚は、庭先に置かれたコロ付衣装ケース(74センチ)に住んでいる。当然エアーポンプや濾過装置など一切付いていない。酸素は水草の自然な光合成にかかっている。雑草魂がないと生きていけないのだ。
 でも、出目金とかリュウキン(丸っこい)は見てる分には面白い。しかし和金を侮るなかれ、中には尾ひれ、背びれが長くて優雅なのもいる。 
 次は色。圧倒的に多いのは赤1色の金魚(というか濃い橙)。でもよく見ると、赤にも随分と濃淡がある。中には、赤と白のブチ、めずらしく白1色の金魚もいた。
 最終的に、和金でも比較的優雅な尾ひれの長い金魚と、赤と白のブチで太っちょのと、形はまさにフナだけど白1色の3匹を選んだ。1匹当たり30〜100円と安い買い物である。
 早速家に連れ帰り、2〜3日間我が家の水に慣れてもらうため、新入りのみをバケツに仮住いさせて様子を見る。水が変わると適応できず、死んでしまう場合や大所帯の金魚店から病気を持ち込んでしまう場合があるので慎重に対応する。今回は大丈夫、3匹ともいたって元気だ。
 そして合流の日、仲良くやってくれるといいなと願いつつ、バケツからコロ付衣装ケースへ。よくテレビで稚魚を川に放流するシーンをみるけど、きっとこんな気持ちなんだろう。その一方、金魚って、自分と他人の区別や他人同志を区別できるのか、差異に気づける頭があるのかと思うと多いに疑問だ…。でもきっと相性はあるんだろうな…。
 いや、あったのだ。
 合流して2日くらいたった頃、水槽を眺めていると、新入り‘白’が仲間を追いかけ回している。仲良く遊んでいるものとばかり思っていたが、どうやら様子が違う。追い駆けられている金魚を見る限り、じゃれているのではなく、逃げているのだ、しかも必死に。‘白’ときたら、負いつくと更に追い討ちをかけるかのように、つつきまくる。おかげで傷ついている金魚もいた。
 こんな攻撃的な金魚は初めてだ。
 合流による緊張・興奮のせいもあろうかと、ひとまず‘白’1匹をバケツへ隔離、落ち着くのを待つが、‘白’は1匹になっても、一向におとなしくなる様子もなく、バケツの中を所狭しと泳ぎ回る。自らの尾を追い駆けるかのように半狂乱にクルクルと。
 自称「金魚の母」のunizouもホトホト困った。師匠である同級生のお父さんに電話し、経緯を伝え、どうしたらいいか聞いてみる。
 (師)「たまにいるんだよねぇ、気性の荒いの。金魚にも気性あるからさ。」
 (U)「どうしたらよいでしょう?」
 (師)「いいよ、引き取るから持っといで!」
 あぁ〜助かった。金魚の返品ってあまり聞かないよな。‘白’には悪いけど、古巣に帰ってもらうことにする。‘白’をバケツに入れたまま、バケツ片手に歩くこと10数分、‘白’はまた売り物の水槽に戻っていった。
 金魚から学んだこと。金魚にも性格がある、そして仲間との相性がある。「たかが金魚、されど金魚だ。」
 ‘白’はその後どうしているだろう?
 今思えば、全身真っ白のめずらしい和金。そのめずらしさゆえ、他の金魚から奇異な目で見られたり、いじめられたりしてきたのかもしれない。攻撃的な姿勢は、‘白’が自分の身を守るための術だったのかと思うと、‘白’に悪いことをしたなと思う。
 「攻撃は最大の防御」、これは‘白’に教わった。