自分のルーツ

 戸籍について学ぶ機会があった。
 戸籍は自分のルーツをたどれる貴重な資料である。
 一般的に先祖で分かっているのは、曽祖父までという家が多く、曽祖父の父母のこととなると、名前や出身地しらおぼろげというのが普通だそうだ。でも、古い戸籍を取寄せると、江戸時代末期の頃までなら記録に残っている場合があって、自分のご先祖様を知ることができるという。ただし、この除籍簿の保存期限は80年!あまりゆっくりしていると廃棄されてしまう恐れもある。ご先祖様のことを少しでも知りたいならば善は急げ!と教えられた。
 というのも、面白いのは、この曽祖父世代と言うのは、幕末から明治初期に生まれ、明治を生きた人々。
 幕末の混乱のなか、西南戦争戊辰戦争などの内乱に各地から参戦し、落武者となって故郷から離れた場所に住みついた人も多い。そんな時代背景もあって、曽祖父世代の多くは日本全国をかなり激しく移動しているのだという。そういう意味では、意外な場所にゆかりがあるなんてことが分かるかもしれない。
 しかし、戸籍調べにはちょっとした技術がいる。平成大合併と言われる市町村の相次ぐ合併と戸籍のオンライン化が戸籍調査に与える影響ついて、少し知っておかないとなかなか過去へ遡れないんだそうだ。忘れないうちに書き留めておこう。定年したら「自分史」を整理しようと思ってる人にはきっと耳よりな情報だ。
① 合併で消えてしまった市町村に置かれていた本籍地は合併後の新市町村に旧市町村名のまま引き継がれる。
② 最近のオンライン化で戸籍が整理され、整理前後で内容が違う、区別のため整理前を「平成改製原戸籍(除籍謄本)」、整理後を通常の戸籍という。どこが違うかと言うとオンライン化前に除籍となっていた者は、オンライン化後の謄本に反映されない。
   例えば改製前のこんな戸籍は、 
    A(筆頭者)
    B(妻)除籍…死亡により除籍
    C(子)除籍…結婚により新戸籍編成につき除籍
    D(子)
     ↓
   改製後こうなる
    A(筆頭者)
    D(子)
 だから、戸籍謄本のほかに改製前(改製前原謄本(除籍謄本のひとつ))も調べないとルーツを遡れない。

③「平成改製原戸籍」以前の大改製に、「昭和改製原戸籍」がある。これは、昭和22年の民法改正で「家制度」が廃止されたことによるもので、それまで戸主を中心に「家」に帰属する家族が孫や姪までズラーッと載っていたものを、「夫婦と子」単位に変更したのだ。
   例えば、法改正以前のこんな戸籍が、
    A(戸主)、B(父)、C(母)、D(妻)、E(子)、F(子)
     ↓
   改製後はこう作りかえられた。
    戸籍1 B(父)、C(母)      
    戸籍2 A(戸主)、D(妻)、E(子)、F(子)



 あいだみつお氏の詩「自分の番いのちのバトン」がふっと浮かんだ。

 「自分の番 いのちのバトン」
    父と母で二人
    父と母の両親で四人
    そのまた両親で八人
   こうしてかぞえてゆくと
   十代前で千二十四人
   二十代前では―?
   なんと百万人を越すんです。
  過去無量の
  いのちのバトンをうけついで
   いま ここに
   自分の番を生きている
    それが
    あなたのいのちです
    それが わたしの
     いのちです
        みつを

 祖先が誰であろうと構わないというご意見もあろう。
 でも、今自分が在るのは、自分だけの力でないことはもちろん、両親だけの力でもない。  
 こんなにも多くの人から受け継がれたものなのだ。
 急に自分に人生の応援団ができた気がする。