金魚の話 vol.2

 卵から孵化して1年くらいで3〜4センチまで成長するというのは、「金魚Vol.1」の話。
 今日は、初代〜3代目までが 現役だった、平成10年頃のこと、初代(1匹)と2代目が同じ水槽で、3代目は別の小さめな水槽を泳いでいた。水槽と言っても我が家の場合は、コロ付衣装ケース(74センチ)を代用している。泳ぐのに十分な広さであるのと、何より軽いので水の取替え作業がとても楽なのだ。
 さて、3代目だけ別な水槽なのは、餌取り合戦に負けてしまうため。片や15センチ級、7センチ級と3センチ級では体のサイズが違いすぎる。餌取り競争に敗れては一向に大きくなれないという親心だ。
 しかし、その年の産卵シーズンが終わり、4代目が育ってくるとなれば、3代目を格上げし、親世代が住む水槽へ引越しさせ、その水槽を4代目に譲らなければならない。かくして「3世代同居」の日々が始まった。「3代目、頑張れ!」という気持ちで毎朝餌をあげる。案の定、バキュームカーのように餌を吸い込む親金魚、兄金魚に圧倒され、そのおこぼれにありつくのがやっと、なかなか大きくなれない。
 様子を気にしながらも数週間が経過したある日、ふと親金魚の体をみると所々ウロコが剥げている。「穴あき病(※)」かと思い、慌てて同級生の父親が営む近所の熱帯魚屋へバケツに入れて連れていく。早速診察してもらったところ、どうやら心配していた「穴あき病」ではないらしい。では何なのか???
 金魚の住環境や最近変わったことなどなかったかを質問され、衣装ケースで飼育、3世代同居、酸素は水草からの光合成のみなどと思いつくままに説明する。
 そして、先生が納得したような顔になる。「分かったよ!原因は3世代同居!」と。先生によると、どうしても年寄り金魚は、チビから見ると動きが緩慢で、追いかけまわす対象にされやすいのだそうだ。数匹のチビは遊び半分かもしれないが、親にすれば、毎日追いかけられ、つつかれ、結果そのストレスでウロコが剥げてしまったのだという。「人間だって3世代同居は難しいだろう、金魚も同じだよ。」
 先生に言われたことを半信半疑に思いながら帰宅し、元の2つ水槽体制に戻す。するとウロコが剥げどまり、充血もなくなり日に日に快方に向かっていったのだ。ということは、やはり「3世代同居」が原因だったということになる。
 ボーッと何も考えずに泳いでいるかと思いきや(その姿に癒されてもいたのだが)、意外に繊細なところを持ち合わせているのに正直驚いた。また、3代目ばかりを心配していたが、親の方がこんな目に遭うとは…。「たかが金魚、されど金魚」はまさにこの経験で感じたことだ!生き物から学ぶことは多い。

※穴あき病…初めは金魚のうろこ1枚程度が充血しているように見える。進行するにしたがって金魚の充血している範囲が広がってゆき、さらに、進行すると金魚の炎症がひどくなりうろこが落ち、中の肉が見えてくる。穴あき病に感染した個所に水カビが寄生してしまうこともある。細菌に感染して発症、 一般的に抗菌剤といわれる薬品にて薬浴+食塩浴で治療する。