赤福

 名古屋へ行けば、株式会社坂角総本舗の海老せんべい「ゆかり」と株式会社赤福の「赤福」を土産にするのが常だった。
 両社とも老舗である。
 その一方の老舗、「赤福」(三重県伊勢市)が製造日偽装問題で、さらには、売れ残った看板商品「赤福餅(もち)」をそのまま包装し直しただけの「まき直し」して出荷していたとして、営業停止処分となった。
 この問題、どう考えても生産管理の問題であるが、最終的には「消費者のために」行なったことが、「会社のために」と変わってしまったことが、最大の要因であると思っている。
 最初はこんな会話で始まったことではないのだろうか。
 「たくさんのお客さんに食べていただきたいね」
 「そうですね。伊勢参りにいらっしゃるお客さんがどうしても食べたいとおしゃっていますしね。できれば、名古屋あたりにいらっしゃるお客様にも食べていただけたら・・・」
 「でも、生ものですから、作る量はよくよく考えて、売れ残りがないようにしましょう」
 「そうだね。お客様には申し訳ないが、売り切れ御免となっても、商品の品質を保つためには致し方ないからね」
 こうして、工場を作るなど設備投資を行ない、人を雇う。 こうなると、さっきの会話がこうなる。
 「たくさんのお客さんにたべてもらいたいね。でも、売り切れ御免になると、せっかく来ていただいたお客さんに申し訳ないね」
 「工場も設備投資して作りましたし、雇っている人だって、遊ばせていくわけにはいきませんからね」
 「そうですね。では、生ものですが、多少の賞味期限を変えても影響ありませんし、一度集荷したものも、再度作り直せば、影響ないですからそうしましょう」
 こうして、生産管理が難しい生ものの扱いは、安易に流れていく。
 お客様の視点から会社の視点へ変わって行ったことが、いやお客様の視点だと思っていたことが実は会社の視点だったということが、今会社を窮地に落としている。
 たくさん販売して、たくさんの売上をあげることが、儲かっていることだと思いがちである。
 売上高何兆円、何千億円というような会社が、さも素晴らしい会社のような視点に経営者は陥りがちである。
あるとき、中小企業の経営者にunizouはこういったことがあった。
 会社を大きくして、「地域一番、いや日本で一番になってください」と。
 すると、その経営者は、「今くらいの規模が一番いいんですよ。図体が大きくなると、いろいろと面倒なことがありますから・・・」と。
 その当時、一体どういうことかと思ったが、今回の件で、ただ単に売上を大きくすることに汲々とすると、手痛いしっぺ返しがくるということだとわかったような気がする。
図体が大きくなると、それに伴って、たくさんの問題を抱える。
 大事なのは、いい商品やサービスを提供して、利益をあげることなのだ。
 そのために、お客様のための生産管理を徹底しなければいけないと・・・。