湯布院 地域活性化に必要なことの実践

 一時期、特急電車や電車の本をたくさん見る機会があった。
 その中で是非乗ってみたいとその電車と、電車を映した背景に引かれたのが、ゆふいんの森号だった。
 そして、その電車をきっかけに湯布院という温泉を知り、テレビなどの旅行番組などで取り上げられてその名前が強く印象付けられた。
 それ以前は、「良い湯だな」の歌で知られる草津や登別、そして由布院のお隣の別府温泉が人気の温泉地だと思っていたが、今では行ってみたい温泉地のベストワンだということまで当然知っている。
 では、なぜその湯布院が人気の温泉地になれたのかということを、先日テレビで見て、これこそまさに、中心市街地活性化に繋がることだとつくづく感心した。
 その番組は、日曜日の午前7時半から30分間放送されているがっちりマンデーという番組。
 9月30日の放送は「儲かる地方自治体 第2弾」と題して、「加速する少子高齢化や過疎化、未だに残る古い体質や効率の悪い運営など、多くの地方自治体には景気の悪いイメージが…しかし、前回そんなピンチを乗り越え、儲かる地方自治体へと大変身したケースをお伝えしました!今回はその第2弾!全国には儲かっている元気の良い地方自治体がまだまだあるんです!財政難を吹っ飛ばせ!そんな儲かる地方自治体を大公開します!」ということで紹介されたのが、湯布院。

 町のみんなで一致団結!湯布院温泉。儲かる地方自治体!まずは、大分県由布市湯布院町。人口1万人、1千メートル級の山々に囲まれた小さな田舎町です。名峰、由布岳を町のどこからでも出来る湯布院は雑誌や旅行会社が行なう、行ってみたい温泉地ランキングで毎年のように人気ナンバー1を獲得しています。
 しかし、一昔前までは、巨大旅館が立ち並び、団体客で賑わう、隣の別府温泉に圧されていました。
 小さな温泉宿しかなかった湯布院は宿泊者ゼロの日が何日も続くほど寂れていました。
 「土曜も日曜も関係なく、お客は来ませんでした。雨が降れば雨漏りする状態で、とても旅館として成り立つものではありませんでした。」
 そんな湯布院がなぜ全国でも人気の高い温泉地に生まれ変わったのか?そこには数々のピンチをチャンスに変えた、町ぐるみの取り組みがありました

  • ピンチをチャンスに変える その1

 30年前にエコ!?
 湯布院に最初のピンチが訪れたのは今からおよそ30年前、なんと町にダム建設計画が持ち上がったのです。 山々に囲まれた盆地の湯布院はダム建設にはもってこいの地形でした。
 更には、近隣にゴルフ場建設計画まで浮上したが、湯布院の皆さんは環境と大事にしようと一致団結しました。これは全国にアピールする大きな要素です!」
 町は環境保護という、この時代には誰も取り組んでいなかったテーマをいち早く全国に訴え、建設中止を勝ち取ったのです!

  • ピンチをチャンスに変える その2

 町のPRに馬車!?
 1975年、大分県中部地震。この地震によって倒壊した隣町のホテルが新聞に掲載され、湯布院の町までもが壊滅したように報道されてしまったのです。
 地震のマイナスイメージをなんとか払拭しようと、ここでも町が一致団結!
 町に馬車を走らせたのです!するとこれが大当たり!目新しさに各地でテレビ局がこぞって取材に訪れ、町の復活をアピールすることに成功しました!
 しかし、馬車を走らせた本当の狙いは別のところにありました!
動く動物を映像で捉えた後ろが、風景として映し出され、自慢の田園風景が紹介されることを狙ったのです! この狙いも見事的中しました!このPR作戦の成功により、温泉地としてのブランドを確立しました。

  • ピンチをチャンスに変える その3

 町を守る条例を作る!
 しかし、1990年、町は最大のピンチを迎えます!世はバブル最盛期、お金の余った不動産業者が湯布院にリゾートマンション計画を持ち込んできたのです。
 湯布院町4000世帯に対し、計画されたマンションは3500世帯!まさに、町の中に町をもう一つ町が出来てしまう途方もない計画でした。不動産業者は田んぼ一反(300坪)に対し、1億円もの値をつけ、容赦ない用地買収をけしかけてきました。
 このままではダメだという事で、取り締まる条例を早急に作らなければいけいと、試行錯誤した結果、平成2年9月に『潤いのあるまちづくり条例』ができた。
 町は不動産業者に対して、独自条例を作ることで対抗しました。どこからでも由布岳が望めるようにと高さ10メートル以上の建築物を規制。更には、床面積1000平方メートルを超える大きな建物にも規制をかけ、横にも縦にも制限を設けたのです。この条例により、計画は中止せざるを得なくなり、町は守られたのです。
今や日本一の温泉町と言われる湯布院!その最大の特徴は、「町がひとつの温泉宿」であること!そこには湯布院のこんな鉄則がありました。
<鉄則1 売り上げ公開>
 湯布院の温泉宿は、組合に対して売り上げを完全に公開!誰がどれだけ儲かっているかが一目でわかる仕組みになっています。
 なぜあの宿はあそこまで営業利益を伸ばせたのかなど、各々分析をします!そのようにして節約のノウハウや、これからの展開の参考にします。
 これにより宿同士が切磋琢磨!町全体をひとつの温泉宿と考えることで、更なるレベルアップ!
<鉄則2 客の囲い込みをしない!>
 普通の温泉宿では自分の旅館が満室の場合、お客様を断るだけしかできません。でも、湯布院はココからが違います!自分の宿が満室のときは別の宿を紹介するのです!町を訪れるお客さんを逃がさないことが重要と昔から自然と行なわれていることだとか!
<鉄則3 宿のレシピを公開!>
 自分のところのレシピは人に教えないのが常識の料理の世界で、湯布院ではその垣根を取り払いました!若い人から料理長まで集まり、それぞれ1つの料理を持ち合ってお互いに試食し合います。そして、意見交換する
 レシピを教え合う勉強会を開いたりするなど、町全体で料理のレベルアップを計っている。
 危機に対し、常に町がひとつにまとまって取り組んだ湯布院!これからも進化し続けます!
 TBS がっちりマンデーホームぺじより抜粋 http://www.tbs.co.jp/gacchiri/oa20070930-mo1.html

 中心市街地活性化に共通することは、町全体が協力して取り組み、そして個々の利益や権利ばかりを主張しないこと。
 そういったことを住民が理解していれば、法律も中小企業診断士ももっと生かされてくるものだと、今回の放送で改めて思ったところである。