土曜ドラマ「はげたか」と改正会社法

 昨年施行された会社法について、法務省民事局のホームページ「会社法の概要」を見る。
その目的は、

  1. 最近の社会経済情勢の変化への対応等の観点から,最低資本金制度,機関設計,合併等の組織再編行為等,会社に係る各種の制度の在り方について,体系的かつ抜本的な見直しを行っています。
  2. 商法第2編,有限会社法株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律等の各規定を現代的な表記に改めた上で分かりやすく再編成し,新たな法典(会社法)を創設しています。

とある。http://www.nhk.or.jp/hagetaka/story/outline02.html
 また、「会社法の要点」の1に、「利用者の視点に立った規律の見直し」があり、「中小企業や新たに会社を設立しようとする者の実態を踏まえ、会社法制を会社の利用者にとって使い易いものとするために,各種の規制の見直しを行っています。」とある。

  • 株式会社と有限会社を1つの会社類型(株式会社)として統合

 いわゆる株式譲渡制限会社(その発行する全ての株式についてその譲渡につき当該会社の承認を要する株式会社)について取締役の人数規制や取締役会の設置義務が課せられない現行の有限会社型の機関設計の採用を認めるなど,株式会社における定款自治の範囲を拡大し,その規律の多様化・柔軟化を図ることにより,現行の株式会社と有限会社の両会社類型を1つの会社類型(株式会社)として統合しています。
 既存の有限会社については,引き続き従前の規律を維持するための所要の措置を設けています。

  • 設立時の出資額規制の撤廃(最低資本金制度の見直し)

 株式会社の設立に際して出資すべき額について,下限額(現行法では株式会社につき1000万円,有限会社につき300万円)の制限を撤廃しています。
 昨年通っていた資格の学校T○Cのテキストには、「創業を円滑にする必要性が高まっていること、債権者は取引先の信用について必ずしも資本金の実態を重視していないという実態があることなどの理由により、会社法施行後は最低資本金制度は廃止される。」といったことが書いてある。
 しかし、最低資本金制度の見直しは良しとして、「株式会社と有限会社を1つの会社類型(株式会社)として統合について」は、やはりいまだにどうなのだろうと思う。
 NHKで放送されている土曜ドラマ「はげたか」http://www.nhk.or.jp/hagetaka/story/outline02.htmlの第2回「ゴールデンパラシュート」をみても、外資が金に物を言わせて企業買収を繰り広げ多額の利益を上げている姿に目を奪われがちだが、一方で、一族が会社を私物化する悪しきオーナー企業に会社の公共性・公益性はひとつも見られない。取締役会などがあっても、機能していないのである。
 ところが、改正会社法で、最も基本的なパターンである中小株式会社の典型である譲渡制限会社であって取締役会を設置しない大会社以外の会社は、絶対的必要機関は、株主総会と取締役(1人以上)であり、他の機関は任意となり、株主=取締役の1人会社でいいのである。これで、会社が私物化されないと言い切れるだろうか?
 つまり、個人事業主と何が違うのか・・・?
 株式会社であれば有限間接責任となり、個人事業主であれば直接無限責任となる。
 そして、税金の額も違ってくる。
 会社になると、無責任そのものなってしまう懸念はないのか?
 NHKで放送されている土曜ドラマ「はげたか」で見たように取締役会を設けている株式会社でさえ、債権者や従業員などの利益が二の次どころか三の次、四の次になってオーナー一族の利益にばかりが優先されているのに、改正会社法では、そうしてくださいといっているようなもの・・・?
 法律改正前も実態としては財務面での適性さや企業としての公共性を担保するものが何もない状態であったが、法律でそれを認めてしまったことは、今後、中小企業自体の存在を危うくしていくもの思えてならない・・・。改めて、公平・公正な社会基盤を作れない日本の一端を垣間見ているような気がしている。