恋文代筆業

 読売新聞の社会面で、夫婦、恋人のありようを「ときめいてますか?」と題して特集している。
 昨日のテーマは、恋文代筆業。
 女性向け雑誌のフリーライターが、副業にラブレターの代筆ビジネスをしているという話。
 彼女は、30分から1時間をかけ、電話や対面でじっくり話を聞くなどして、相手への思いを分かりやすく文章にして、料金は1200字の場合、5千円から2万円だそうだ。依頼者はインターネットで募っているという。
 今回の依頼者は交際相手のいる男性。
 彼女には、男性は自分の気持を整理して表現するのが苦手ない人と映ったという。
 そして、最近は、書籍でも「モテルための・・・」というのが人気という。
 最後に、夫婦問題などの相談に応じている「東京家族ラボ心理研究所」主宰の池内ひろ美さんの指摘が、以前unizouがブログに書いた「傷つきたくない症候群」と同じ気がしたのは自分の思い過ごしか・・・?
 「今の若い人は、失敗や拒否されること、認められないことにとても臆病になっている。それを避けようと、他人のノウハウに頼りがちだ。」
 今の若い人というのが、何歳くらいの人を指しているのか不明だが、結婚しない症候群の人たちの40歳前後の人たちも、原因は同様だと思う。
 いろいろ理屈はつけても、結局は、面倒なことは避けたいというところなのだと思う。
 そういえば、同じ読売新聞の「本のソムリエ」に次のような相談があったのを思い出した。
 「年をとることが不安」という17才の少女からの相談。

 私はまだ10代ですが、最近、年を重ねるのが嫌になってきました。大人になるにつれ、少女のころの純粋な感性、素直さが失われてゆくようで焦ります。年を取ることへの不安がなくなる本をご紹介下さい。

 それに対して、回答者の井上荒野さん(作家)が、次のように答えている。

 純粋、素直であることは、そんなに素晴らしいかしら。小さな子どもが純粋なのは、まだこの世界の端っこしか知らないからです。でも、人は、世界の端っこだけでは生きて行くことはできません。
 純粋でなくなっていることを嘆いているあなた。一見美しいですが、正直に言わせてもらえば、たんに面倒くさくなっているだけのようです。
 生きていくのは面倒くさいものなのです。
 「年を取る事への不安がなくなる本」とは、「面倒くさくない人生について書いてある本」なのでは?そんな本はないです。(あっても私は嫌いです。)

 そして、井上荒野さんは、著者川上弘美さんの「古道具中野商店」【新潮社刊】を紹介している。

この本を読んで、「面倒くさい人生もおもしろそうだなと思ってくれたらうれしいです」

と締めくくっている。
 最初に紹介した「ときめいてますか?」の最後にも、「恋愛は傷つきながら学ぶものなのに、失敗したくないと、ラブレターの文面でさえ買ってしまう」と書いている。
 恋愛だけでなく、生きるということ自体が人と関わっている以上、自分の思いだけで通らない面倒くさいもの。
 診断士になっても同じこと。生身の人間を相手にすることは、そういうことだと思う。
 試験はもちろん通過しなければ診断士になれないが、井上荒野さんが言うように、「面倒くさいからおもしろい」といえるような深みのある診断士になれたらいいと思っている。