私募債

 昨日、中小企業診断士の2次試験合格報告をしたところ、たくさんの方にコメントをいただいた。
 また、1日のアクセス件数も600件を超え、多くの方に関心を持ってもらっていたと感謝し、改めて2次試験合格の喜びを味わわせてもらった。本当にありがとうございました。
 気を引き締めて、口述試験に向かいたいと思います。よろしくお願いします。
 さて、今日のテーマは、常日頃から関心のある資金調達の中で、私募債を取り上げたい。
 金融機関からの資金調達が難しくなった場合、どうしたらいいか。
 もちろん、企業として、経営の改善を行い、業績を伸ばせることを前提としての話であるが、それでも、金融機関が「これ以上の融資を行なわない」と言ってきた場合のことである。
 金融機関の貸出態度が以前と変わってきたと言っても、担保がない企業に追加融資をするほど企業実態を把握できるはずもなく、特に大手スーパーのごとく薄利多売をモットーにしているメガバンクにはそんな余裕があるはずがない。
 バブル期以降、金融機関が土地や保証を担保とした融資の姿勢を変えてきたといっても、完全に企業実態を把握した融資になったわけではないのだ。となると、金融機関に「これ以上の融資を行なわない」と言われた企業は、まず税金などの公租公課を滞納する。そして、あげくには、親戚・知人を連帯保証人にして高金利な融資を受ける。
 そうなった場合は、最悪である。高率な負担が資金繰りを圧迫し、そして運転資金に事欠くようになる。それでも、街金に手を出していないならいいが、街金に手を出してしまったらもう資金の自転車操業である。
 もう、法的な整理などできるはずもなく、経営者一家は、夜逃げ同様にふるさとを捨てる。
 そして、連帯保証人になった親戚・知人にも不幸の波が押し寄せてくる。
 4年前くらい前にアスキーコミュニケーションズから出版された「企業再生屋が書いた 借りた金は返すな!」【加治将一八木宏之共著】の前書きには、つぎのようなくだりがある。

 15年にわたってカリフォルニアで不動産事業をやってきた関係上、あちらの銀行を詳しく知っているが、日本の金融機関の体たらくといったら、お話にもならない。
 庶民に金は貸さないわ、不動産下落のリスクは取らないわ、弱みにつけ込んで過剰担保は取るは、いざ返せないとなると、「連帯保証人」というもっともらしい手で、拉致ずみの関係者から金を強奪する。
 何のことはない、合法的な「人質商法」だろう。
 これに引き換え、アメリカの銀行は違う。不動産の下落のリスクは金融機関がちゃんと負い、その上連帯保証人という人質も取らない。

 親類縁者を連帯保証人にすると逃げ道がなくなる。
 最後にもう一つ、肝に銘じておいてほしいことがあります。
 それは、銀行の融資が受けられなくなって、仕方なく商工ローンや街金に手を出す場合でも、「絶対に親族を連帯保証人にしてはいけない」ということです。
 再起を図る場合、一番頼りになるのは親族です。助け舟を出してくれるかもしれない親族を道連れにしてはいけません。縁者を巻き込むと、自分の居場所をなくしてしまうことになります。実際、上野公園や新宿駅の地下、隅田川の河川敷といったところで路上生活をしている人たちの中には、親族に多大な迷惑をかけたという人たちがすくなくありません。
 彼らは、親族に合わせる顔がないから、そうやって逃げるしかなかったのです。
 前にも言いましたが、高利の金に手を出すのは言うにおよばず、ましてや、連帯保証人になど、絶対にしてはいけません。
 では、高利の金を引っぱらざるを得ない状況になったとき、どうすればいいのか?
 決して無理をせず、弁護士に頼んで法的整理をするか、コンサルタントに相談して任意整理をするのがベストな選択です。
 親類縁者を引きずりこんでの悪あがきは、もはや事業家がやることではありません。その手前までが正常な事業の範囲であって、そこから先は「事業」ではないのです。
 事業家には超えてはならない最後の一線があるんだということを、よく覚えておいてください。

といっても、経営者であれば最後の悪あがきはしたいだろう。
 連帯保証人をつけない方法で、何とか金融機関以外から資金調達する。
 一番手っ取り早いのは、増資である。しかし、上場しない限り一度手にしたら譲渡することもできず、配当のみが株主の利益で、当初から戻ってこないことを前提にして親類縁者といえども頼むことは難しいだろう。
 そこで、縁故者に対する社債である私募債が妥当な資金調達手段ではないかと思っている
 社債権者にとっては、当初から返済がないことを前提にしているのでもないし、現在の預金利息よりは、若干高めに金利が設定されるなどのメリットがある。
 もし、事業がうまくいかず失敗しても、社債の範囲内の損失で済む。
 昔から「金を貸したら、捨てた気(返ってこないことを前提に)で貸してあげな」と言われている。まさに、そのことなのだ。
私募債とは、

少人数私募債発行の条件は
(1)発行体が株式会社であること
(2)債券の引き受け手が五十人未満の縁故者であること。
※縁故者とは経営者個人、経営者の親族、知人、社員、取引先などをいいます。
(3)五十名以上に譲渡されるおそれがないこと
(4)発行価額の総額が一億円未満であること
(5)社債の一口の最低金額が五十分の一未満であること
(6)無担保社債とすること
社債発行の際、担保設定の義務はないので無担保社債とします。ですから発行会社を信頼し、理解を得られる投資家への勧誘が必要です。

ゆうゆうクラブホームページより抜粋
 http://www.demand.co.jp/owner/yuyuclub_backnumber/01_1syouninzuu_0312.html
 金融機関に融資を断られて資金繰りに困っている方は、是非一考する価値があると思う。ただし、あくまでも、企業経営が上向きとなり採算が取れる事業計画があることが前提であり、そうでないなら、撤退も重要な選択肢であり戦略であることを十分認識してもらいたいと思う。