相続に見る因果応報

 相続のことで、不思議だと思うことがたびたびあった。
 そういったことは、一つの家族の相続だけでなく、いくつかの相続で聞いた話である。

 民法上では、何人でも養子縁組することが認められている。
 しかし、養子縁組をして相続税を少なくしようという人がいるので、相続税法では法定相続人になる人数を制限している。
 国税庁のホームページには、次のようにある。

(1)  被相続人に実の子供がいる場合
   一人までです。
(2)  被相続人に実の子供がいない場合
   二人までです。

国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁
 つまり、例えば息子の嫁は相続人ではないが、嫁を養子縁組したり、あるいは孫を養子縁組したりして、相続人を増やすということをする人たちがいる。

 しかし、相続税を安くするにはいいのだろうが、その結果が相続人に悪い影響を与えることが多かった。
例えば、

  • 相続人間で争いが起こった。
  • 相続人が不治の病に倒れた。
  • 相続財産を誰かに騙されて失った。

などなどである。
 こんな話嘘でしょ?と思う人がいるだろうが、実際にあった話である。

 日本では、「財産残しても相続税で三代でなくなる」と言われ、悪名高き相続税ですが、実際は財産が無くなるのは、相続した人に維持する力がないのだから、仕方ないことだと思う。
 もし、三代と言わず百代先までの子子孫孫残したいなら、財産を維持できる方法もきちんと残すべきなのである。
 なまじっか、中途半端な相続財産を残すから、兄弟仲が悪くなったり、人に騙されたりする。
 そして何より、相続人に生きていく力を失わせる結果になる。
公方俊良住職の「般若心経 人生を強く生きる101のヒント」(知的生き方文庫:三笠書房)には、次のような一節がある。

 例えば、ある人がお金に困り生活に困窮している時、その人にお金をどっさり施してさしあげれば、相手の人はただちに苦しみから解放されるかもしれません。しかし、それで、本当の幸せに導かれるでしょうか。お金がたくさん手に入れば、今度はお金を持つことによって不幸に陥り、苦しむということは、世間によくあることです。これでは、真の解決にはなりません。諺に“飢えている人に魚を与えれば、それで終いだ。それより魚の捕り方を教えてやれば、その人は一生飢えることはない”というのがあります。まさに、このことが大切なのです。

 維持することができないほどの資産をもらっても不幸なことですし、その資産が活かされず、都市の真ん中に空き地や朽ち果てた家が残されているのも、世間全体からみれば無駄なことです。一時のことに心を奪われないことが、相続人にとっても、社会全体にとっても、大事なことなのだと思います。